日本語の音の秘密(志矢木太陀介)

名付けに役立つ話と日本語の音の秘密を書いていきます。表題の太陽系の図はfreepikより。

江戸時代の母と父の話。

杉浦日向子さんという漫画家で江戸風俗研究家の作家(故人)がいます。このかたの著書『江戸へおかえりなさいませ』(河出書房新書、2016年)の中の「江戸のカカア天下」の章で以下の表記があります。

そのまま、転記します。(以下)

 

江戸のころ、子供たちに、父母のありがたさを諭すため、こんなたとえを用いた。「父」というときには、唇をキュッと引き締め、歯と歯を合わせなくては、「ちち」と発音出来ない。「母」と言うときには、唇を柔らかく開き、ホワッと暖かい息を吐かなくては、「はは」と発音出来ない。だから、人と産まれて、父からは、強い筋と硬い骨(キュッ)を授かり、母からは、暖かい血と柔らかい肉(ホワッ)を授かるのである、と。

(転記以上)

 

ずっと前のブログで日本語の音の危機「ママ、パパはやめて」という題の中で母上、父上の事を書いたのですが、江戸時代の庶民は日本語の訓読みの音の質を分かっていたのだなあと、嬉しく感じると共に、江戸時代はさほど遠い昔でもないのに、現代の日本人はいつの間に、この感覚を失って(忘れて)しまいつつあるのかと残念でなりません。

以前、未来は滅び(光が届いていない)、人は過去(太陽の光は8分20秒ほど過去に発生したもの)と今の中で生きていますとお伝えしました。

その意味で江戸時代も過去。「不易流行」と言う言葉がありますが、人の役に立つための改善は常に進歩しつつも、過去への感謝など忘れてはならないものがあります。

不動産のコンサルタントの仕事でたまに、お客様から今、何をすべきでしょうか?と問われる事があります。お墓参りに行って下さいと答えます。それは過去に向き合う動きだからです。何故自分たちがこのような被害に遭ったと嘆く気持ちは分かりますが、物事の原因を探るのに、お墓参りは過去を見つめる点で大事だと思います。親や先祖に感謝する事で心の動きがゆっくりしていくと思います。恨み言ばかりでは何も解決しませんね。

 

杉浦日向子さんの話は、たまたま、読者の方が見つけて知らせてくれたのですが、江戸時代は理にかなった言葉と文化のあった時代ですね。

教育も、読み、書き、そろばんの基本を学んだらあとはその人のやりたい世界に行く。親も利口と言うより、賢かった気がします。世間も賢かった。常識や良識を教えてくれた。

今現在は情報や機械、ITなど目まぐるしい進化の中で、反作用のように同じくらい退化している私達の感性があるかも知れません。重心が外に寄りかかっている。自分自身に戻す事が大事です。

 

*杉浦さんの本によると、非常時は別にして、家の中では「カカア」が一番偉くて、大事にしないといけない存在で、そう出来てこそ家庭は安泰だったと書かれていました。

DVなんかもってのほかです。男の恥です。

 

杉浦日向子さんは若くして(享年46歳)で亡くなられています。本名 鈴木順子さん『す ず じ」の3つのS音の世界をお持ちでした。S音の感性の緻密な世界を超能力的に持っていらっしゃった方だと思います。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。